2017年5月22日月曜日

5月の和菓子 【鶴屋長生】【平安殿】

五月の和菓子です。柏餅を食べるのをすっかり忘れていましたが、今年は素敵な色合いの『唐衣』『躑躅』を見かけたので紹介します。何といっても一年で一番花の咲き誇るのが5月。和菓子になる題材も多く、ネタの多い季節であります。

今回は【鶴屋長生】さんの和菓子。本店は嵐山の方にあります。が京都駅でも買えます。



こちらが『唐衣』
この和菓子、からころもと呼びますが、一体何を表しているかお分かりでしょうか。そう、杜若(カキツバタ)です。中は白あん、外はういろう生地で包んだお菓子で、間に紫の生地を挟んでぼかしを入れています。外の生地を紫に染めて表現するお店もあります。

奥が深いお菓子なのです。唐衣という菓名でなぜカキツバタなのか・・・
これを8年前に知った時は鳥肌が立ちました。

六歌仙の在原業平が詠んだ歌が題材になっています。
『唐衣  着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ』
それぞれの句頭に
らころも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞおもふ』
かきつばた、の五文字が。折句という技法です。
『伊勢物語 第九段』都から東下りの途中、愛知県は三河国八橋で、咲き誇るカキツバタを見て、都に残してきた妻のことを偲んで詠んだ和歌なのです。唐衣とは唐風の最高級の美しい羽織物のことで、カキツバタの美しさと重ねたのでしょう。
掛詞は、なれにし
 衣・・・着馴れた/妻・・・慣れ親しんだ
つま
 衣の端/妻
歌の技法的にはもっと古典の先生に教えて欲しいぐらい技法満載な歌で、意味は、
着慣れた唐衣のように慣れ親しんだ妻を都に置いてきたので、この美しい花を見るとそれが思い出され、はるばる来た旅路の遠さをしみじみ感じるよ。
という歌です。

業平くんの和歌の才能と、感性の豊かさと優しさが感じられる和歌だなーと感じました。
和歌を読み解くのは難しいけど、この和歌とこの和菓子を繋いで『!』を届けられたらと思います。

ちなみに、業平くんの通ったここ愛知県の県花は杜若(カキツバタ)で、国内最大の杜若群は国の天然記念物になっているそう。
京都では大田神社の杜若群が国の天然記念物に指定されていますよ。杜若、美しいですからねー。



さてこちらは、、『つつじ』
躑躅(ツツジ)は前回にも書いたように、街路樹や庭木として日常的に見られることが多いのではないでしょうか。
花が小ぶりで、赤い色なので、これは霧島ツツジかな?と想像したり、
きんとんはオールシーズン、様々な表現を可能にするので一年を通して選びやすい和菓子です。シンプルといえばシンプルなのですが、菓銘と色合いと季節によって、バリエーションを楽しめる、きんとん兄さんなのです。






先日、植物園に行って来ましたので、少しですが載せたく思います。

杜若。カキツバタ。
杜若と菖蒲(アヤメ)と菖蒲(ショウブ)と花菖蒲(ハナショウブ)の違い、分かりますか??
ショウブは花は咲かなくて、実のようなものができます。
アヤメは網目状の模様があり乾いた所に
カキツバタは紫地に目型の模様があり水辺に
ハナショウブは目型の模様で紫以外にも黄色や白があり湿地に





藤も見ごろです。(この写真は春日大社近くの、浮見堂に行く途中に撮りました。)




こちらは水芭蕉。ミズバショウ
水辺・湿地を好みます。ザ・単子葉類ですね。
ちなみに、芭蕉(バショウという別の植物)は、バナナみたいな葉っぱの植物です。お殿様を扇いだりするあの葉っぱです。




こちらは木瓜薔薇。モッコウバラ
由来は中国の木瓜に似ていることから。
薄黄色の小さな花が集まって大きな木になっていてなんとも存在感のある薔薇です。





ヨーロッパ原産のデルフィニウム。
葵っぽくて、日本の花かと思っていたけれど、ヨーロッパのご出身だったデルフィニウムさん。まっすぐ伸びる姿が素敵です。



石楠花 シャクナゲ。
西洋シャクナゲとあったので、和製では無いご様子。
和製のシャクナゲは植木鉢に収まるようなもっと小柄なやつだったなような。。




こちらは愛されキャラ、芍薬。シャクヤク
花が豪華で重みがあるのでどうしても茎が前のめりになってしまったり、意図しない方向に花が向いてしまったりと、美しさのあまり大変な努力を必要とすると思われるのですが、どの株も個性的な花をつけて、魅力的な花です。
日本では美しい女性の例えに芍薬のような・・・と言ったりしたそうです。
中国や日本では漢方薬になったりします。あぁ綺麗。



薔薇。ばら。
ローズガーデンには何種類もの薔薇!薔薇は一言で薔薇と言えども、ものすごい数の品種があって、名前もある。名前と顔が一致しなくてごめんね、と言いたいけれど、これからどんどん新しい品種が誕生してくる花は、薔薇だと思います。(チューリップもすごい数の品種と名前があるが)
ちなみに、横浜市の市花は薔薇で、山下公園や横浜の洋館群など無料で公開しているローズガーデンが素敵なので、薔薇好きさんはぜひ散策してほしい場所です。バラのまちヨコハマ。



おまけ。

京都府立植物園では、週刊見頃情報を発行していて、たくさん植物があるなかでも見頃の植物が分かりやすくなっています。
『疎水アーチ』は和菓子屋【平安殿】へいあんでん さんの新作のお菓子で、和菓子屋さんなのに、洋菓子フィナンシェなのです。疎水の水路閣の煉瓦をフィナンシェで表現したという新作。。平安殿サブレ―とか、いろいろ作っている和菓子屋さんなので、お土産の候補の一つとしておすすめします(*^_^*)

2017年5月5日金曜日

東山七条を巡る 【俵屋吉富】トラりんの和菓子

一年で最も多種の花が咲いている5月、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、ツツジの花で映える京都国立博物館周辺のお話です。


開館120周年記念特別展覧会『海北友松』(かいほう ゆうしょう)の展覧会を心待ちにしておりまして、念願の鑑賞を済ませ、感動。次の部屋へ移るごとに、ドキドキ、ないしはほっこりする絵に癒され、一人の画家の展覧会とは思えないほどの幅の広い作風で大変楽しい内容でした。

桃山時代~江戸時代に活躍した画家なので、時の天下人や文化人との交流や、歴史的背景、時代情勢がキーポイントとなっています。その辺りの歴史好きにとっても、並行して楽しめる内容で、大変勉強になった展覧会でした。

個人的に、妙心寺、建仁寺などで拝見したことのある龍の図や襖絵ですが、やはり、時代と年齢と解説と歴史的背景、周辺前後の作品を把握するだけで、その画家にぐっと近づいたようにさえ感じます。展覧会をきっかけに、もっと好きになる。これに越したことはございません。



リニューアルオープンした平成知新館の前に看板があるので、記念撮影ができます!



念願の、トラりんさんにお会いできました!!!!(大ファンです、待ってました!)
120周年記念と琳派400年を記念して、尾形光琳の『竹虎図』から生まれました、虎形琳之丞(こがたりんのじょう)通称トラりんです。金土日は博物館に駐在しており、会いに行けるキャラクタ―なのです!
いつもハグをしてくれます。もふもふです。面白くてやんちゃな奴なので、見かけたらぜひ仲よくしてあげてください。この間、陣羽織をプレゼントしてもらったそうです。




たくさん咲いています、躑躅。つつじのことをちょっと調べたらとんでもないぐらいの種類がでてきました。ツツジとサツキの見分け方もよく分かってないのに、、と思っていたら、なんと、
ツツジとサツキを区別しているのは日本だけだそう。
原産はアジア。ネパールの国花です。

ツツジ科ツツジ属の類をツツジと呼ぶそうですが、それ以外のドウダンツツジ(満天星躑躅)もツツジと呼ぶので、なんだか謎です。ヤマツツジ、キリシマツツジ、など地名の付くツツジがあるように、江戸時代から品種改良がなされ、日本では馴染のある園芸種ですね。サツキも仲間ですが、シャクナゲ(石楠花)も仲間なんですって。確かに、、!





こちらは智積院さん
花の種類が多く見られる、実は静かな花の寺です。観光客で混み合うことはそんなになく、こっそりお勧めしたい寺院です。個人的には何回も来ていますが、植物の種類が多いので、いつどの季節に来ても新鮮なお庭が鑑賞できます。

長谷川等伯父子の『桜花図』『楓図』などの国宝を鑑賞でき、当時の輝きを再現したレプリカを間近で見ることができます!!

大半の人は、名勝庭園↑しか見ずに帰ってしまわれますが、智積院内の順路は、全てのお部屋と北庭、枯山水庭園、お堂、渡り廊下など順路に沿って行けばすべてを隈なく見ることができるのです。

ゆっくり見れば、こんな発見も。門徒の遊び心でしょうか。素敵です。
新緑の青もみじが爽やか。

廊下から見える空間にも。
という、智積院でした。博物館にお寄りの際はぜひ。





こちらは、海北友松展が始まる以前、博物館の庭園・茶室公開の際、トラりんとコラボの和菓子を頂きました。【俵屋吉富】さん謹製で、なんとも細かいトラりんの薯蕷饅頭でした。俵屋さんは雲龍で有名ですよ。
茶室横の沈丁花、とても綺麗でしたー。


ぐるっとまわって、豊国神社。ザ桃山文化な御門です。この門の正面の通りが「正面通り」と言いまして、何の正面や!?というと豊国さんの正面なんですね。天下人秀吉が支持されていたことが分かりますね。
さらに絵馬は瓢箪型。豊国さんですもんね。

豊国神社を出て、博物館西側の石垣。これ、かなり大きな石ですが、、、
この石垣、方広寺の遺構なんです。こんなに大きな石を石垣に使っている、秀吉の権力を表しているのです。つまり、博物館は方広寺の敷地だったんですね。

博物館の角にある『大仏前交番』一体何の大仏?ってなりますよね、
実は京都には奈良の大仏よりも大きくて金ピカな京都大仏なるものがありました。方広寺の大仏として、秀吉が造らせたのです。(燃えてしまいましたが。そして方広寺も家康との対立となる鐘があり、結果的に炎上します。)

方広寺が秀吉の財力で、どんだけ広かったか分かる遺構が周辺に実はたくさんあります。
博物館の石垣もそうですが、こちらの南大門もそうなんです。

違和感を感じませんか??↓
蓮華王院三十三間堂は、平安時代に平清盛が建てたもの。
ですが、建立は桃山時代。つまり、三十三間堂前のこの南大門は方広寺の南大門であり、参道だったということ。軒瓦を見ると、豊臣家の家紋が。三十三間堂の南側の塀を「太閤塀」というそうです。おもしろいですね。


長くなりましたが、博物館周辺、東山七条のお話でした。
語り始めたら止まらなくなるので、細かいところ省いているのですが、案内希望の方はぜひご案内します!(・o・)